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 twitterにて開催中の頭蓋骨持ち歩き少女賞(仮)参加作品です。
 楽しげでもう辛抱堪らんかったので今更感漂う感じで参加させて頂きました。
 主催者であるすなぎさんるうしぃさんに感謝を。
 詳細はこちら→頭蓋骨持ち歩き少女作品コンペ

 お暇な方はお読みくださいませー。


 CARNIVAL


 待ち侘びているのだ、俺は。

 押し入れを開けると夥しい数の小蠅が飛び出してきた。
 同時に酸味を帯びた臭気が鼻孔を刺激する。部屋のなかでも強烈だが、ここを開けるともう臭うというよりか痛い。脳が痺れる。血管が痒い。蠅が鼻と口に入り込む。べっべっと吐き出す。蠅は唾液まみれによろめき倒れる。死ぬ。 
 日課となった眼前の確認に勤しむ。
 赤黒く変色した肌にはどこから沸いたのか蛆が沸き(これは食い破っているのだろうか)、フードの付いたパーカーとフリルの付いた膝丈までのスカートにうじゃうじゃとまとわりついている。どこかの映画か漫画で見た通り、眼窩は蛆に食い破られている。
 細い腕、細い足、細い首、小さな顔、長い髪。もちろん刺激臭の発生源はこれだ。
 人体の、爛れた臭い。
 
 先月、幼女の死体を拾った。
 まだ死後間もないようだった。コンビニでゴミ袋を買い、詰めて持ち帰り押し入れに押し込んだ。
 幼女は綺麗な顔で死んでいた。頬をつつくとふにっと跳ねた。弾力があるのだ。あいつとは違う。
 おもしろくなって服を脱がして小一時間隅々までつついてまわった。お尻はよかった。とてもよかった。下着が少し茶に染まっていた。幼いのだなと思った。
 それで満足して寝た。あまりの寝付きのよさに翌朝驚いた。いつもは明け方までかかるというのに。

 しかしもう新鮮さは損なわれている。それは仕方ない、死ぬとはそういうことなのだ。
 俺は買ってきた8千円のドイツ製の鋏を取り出し彼女の額に差し込んだ。つるんと入り込む。いい感じ。熟れているのだ。
 俺はいつか読んだ村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」に出てくる皮剥ぎ将校を想起する。その将校は生きたまま人の皮を剥ぐ。彼を差し向けた別の将校はこう言っていた。
「本当に、桃の皮を剥ぐように、人の皮を剥ぐ。見事に、綺麗に、傷ひとつつけず。」
 こうも言っていた。
「皮に傷をつけないできれいに剥ぐには、ゆっくりやるのがいちばんなんだ。」
 俺は自分がその皮剥ぎ将校になった様をイメージする。ゆっくりと、確実に。慎重に。失敗は、許されない。
 髪が抜け落ちないように、頭部を、ぞ、ぞ、ぞ、と剥ぎ進めていく。けれど皮はぷつんと切れてしまった。
 あがが。
 再チャレンジ。
 桃の皮、桃の皮、桃の皮剥き。ぷつん。
 あがが。
 どうにもうまくいかない。皮膚がひっかかって、これではつるりと剥くことができない。髪が、ぼろぼろと抜け落ちてしまうのだ。うまくない。髪を付けたままの頭皮が欲しい。
 もうちょっと熟れるのを待った方がよいという結論に達し、押し入れの戸を閉めた。
 ウキウキしながら眠りに落ちた。
 
 待ち侘びているのだ、俺は。

     *

「ねぇ、最近あなたちょっとおかしいよ」
「え?」
 ほげーっとしていたら育子が上目遣いにこちらを伺っていた。
 ああごめんごめんなどと言いながら料理を口に運ぶ。この肉は北欧のどこそこの地方で母乳だけ飲ませて育てた仔豚の肉らしい。要は死体だ。口に運ぶが味がしない。
「で、なに?」
「……なにかあったの?」
「なにも」
「でも、なんだか最近、どこか上の空じゃない……」
 育子は赤ワインのグラスをくるくると廻す。それを見ていたら俺の世界もくるくると廻る。俺は横を向く。眼下の町並みが綺麗だ。まるで蛍イカの群れを見ているかのようだ。蛍イカは綺麗だ。小笠原は父島で釣り上げたことがある。墨を吐かれた。おもしろかった。奴はやる。
「ねぇ、聞いてるの?」
「聞いてるよ」
「もう、やっと一緒になれるっていうのにつれないんだから……。それとも、男性にとって結婚ってそういうものなの? 手に入れた女なんて、興味もなくなっちゃうの?」
「ばかだなぁ」俺は微笑する。「むしろ逆。自然体でいられてるってこと。今まではちょっと無理してたんだ」
「そう、なの? でも少しは肩肘張って欲しいな。だってそうしないと老け込んじゃうもの」
「ごめん」
 ほぅっ、と彼女は息を吐き、グラスを口に運んだ。頬はほんのりと染まり、唇は光っている。息は軽く弾み、こちらをもじもじと伺い始める。そしてテーブルの下つま先でちょんと蹴られた。疼いているのだろう。
 これは合図だ。
「ね、いい、よね?」
 潤んだ瞳。上目遣いに。
「愛してるよ、育子」
 彼女は頬を緩ませた。
「今日は、あなたの家に行きたいな……」
「え」俺は目を剥いた。「うちなんて来たって面白くないよ。普通のマンションだよ。屋敷みたいな家に住んでる君が来たって見るものなんてないよ」
「そういう言い方はいや。いいの、だって最近行ってないでしょう? 久しぶりに行きたいの。ね?」
「……しょうがないなぁ」
 彼女は唇を柔らかに持ち上げて目を細めた。
 途中、「お、俺もう我慢できひあくぁwせdrftgyふじこlp」とホテルに連れ込みことなきを得た。

 待ち侘びているのだ、俺は。

     *

 しばらく経って、押し入れのなかも熟成したようだった。戸を開けると、なんかもう半分とろけていた。
「いいかんじ」
 作業に入る。
 鋏と新たに購入したイギリス製のナイフ(欧米系に弱い)を駆使し、幼女の頭皮をもう心底痛んでいる髪ごと剥いでいく。桃を剥くみたいに。
 でろーんと伸びて、ぶちっと切れた。
「あ」
 再チャレンジ。
 でろーんと伸びて、ぶちっと切れた。
 ちょっと腹が立ってそのまま進めた。
 途中、苛々してナイフで蛆を細切れにしてベランダから投げ捨てた。空に舞い上がれ!
 なんとか桃剥きを終了する。
 次いでアルミホイルを用意し、土手から拾ってきた女性用マネキンの頭部に巻き付ける。続いてその上に不織布を巻き付けボンドで頭に沿った形に型を作っていく。
 そこに桃である剥いだ髪付き頭皮をぺったんぺったんアロンアルファで貼り付けていく。植毛です。終えたら土台のアルミホイルを抜く。
 出来た。
 カツラだ。
 
 幼女の、カツラだ。
 
 満点の皮膚移植とはいかなかったが、つぎはぎだらけではあるが、なかなかどうして外側から見る分にはいい感じ。幼女の髪だけあって量は少しばかし足りていないが、贅沢は言ってられない。
 被る。
 腐臭がもわんと顔を覆った。目に染みる。姿見の前でポーズを取る。29歳男子がそこにはいた。せめてスネ毛くらい隠そう。スネ毛を剃りもう一度ポーズ。
「キラッ☆」
 …………。
 俺はすぐさま丸井で購入してきた幼女ものの服を着る。幼女と同じフードの付いたパーカーとフリルのスカート。
 そして改めてポーズを取る。 
「キラッ☆」
 …………。
 くるりと回り、「てへっ」と舌を出す。
「てへっ☆」
 …………。
 気がついたら朝だった。
 
 待ち侘びているのだ、俺は。

     *

「子供は三人は欲しい。一人は娘だ。なにはなくとも娘だ。娘を産むまで産み続けなさい。わかったね」
「はい、父さん」
 俺は父さんになる予定の会長にお茶をつぐ。
 父さんになる予定の会長はお茶をズズズと啜った後、死期を悟った老人特有の遠い目をして語り始める。幾度となく聞かされた話。
「私……いや、俺は、自分で言うのもなんだが苦労してきた。だがな、育子だけはなんとしても育て上げると、それだけを支えに生きてきたんだ。育子には本当に世話をかけた。早くに恵子を亡くし、あいつだって寂しかっただろうに、健気に俺を支えてくれた。親馬鹿と思われるかもしれんが、あいつほど出来た娘はいない。その育子も、やっと自分の幸せに生きられるのかと思うと、父としては堪らなくてな」
「はい、父さん」俺は直立不動で宣言する。「誠心誠意、御期待に添えるよう邁進します。そして、育子は、必ず幸せにします。世界が滅びるその日まで、僕が、この手で、幸せにします」
「世界が滅びる日まで、か。君のその大仰なもの言いは独特だな。だがそれくらいロマンチストでなきゃやっていけんからな、男は。所詮男なんて弱い生き物だ」
「激しく同意します」
「君は自分の幸運を誇るがいいよ。手塩にかけて育てきた大事な娘だ。育子を泣かせたらあらゆる手を使ってでも浮上できんようにしてやるからな」
「はい、父さん」
 握手をする。
「それにしても、なにか、臭うな」
「え、そうですか?」
「口のなかが酸っぱくなってきた」父さんになる予定の会長はお茶を口に含み、もきゅもきゅとゆすいだあと喉を鳴らした。「年かな」
「いやですよぉお父さん」
 はははと笑い合い部屋を辞した。
 夜、スーツも含めて部屋中ファブリーズ緑茶成分入りをシュシュッと撒いた。
 これであと二ヶ月は戦える。

 待ち侘びているのだ、俺は。

     *

 丑三つ時、金縛りに合いながら考える。

 待ち侘びているのだ、俺は。
 待ち侘びているのだ、俺は。
 待ち侘びているのだ、俺は。

 そう、待ち侘びているのだ、俺は。

     *
 
 幼女の死体をドイツ製のナイフで切り刻む。
 だいぶもんじゃ焼きのようになっている女の子のハラミを皿に盛る。
 待ち侘びているのだ、俺は。
 ハラミを口に運ぶ。ねちょねちょする。
 待ち侘びているのだ、俺は。
 だいぶもんじゃ焼きのようになっている女の子のレバーを皿に盛る。
 レバーを口に運ぶ。ねちょねちょする。
 待ち侘びているのだ、俺は。
 骨付きカルビに生でかぶりつく。
 蛆の味しかしない。甘い。
 待ち侘びているのだ、俺は。
 待ち侘びているのだ、俺は。
 長い髪と服が汚れたので目の前の幼女の服を脱がせる。
 着る。
 着れない。
 破きながらも着る。上半身は乳首まで下半身は股までも届いていない。
「てへっ☆」
 ポーズを取る。
 かわいい。
 ピンポーン。ピンポーン。
 すみませーん。
 頭蓋骨を手に浴室へ行く。タワシとバスマジックリンでこすり洗いをする。丹念にそれはもう丹念に磨く。
 すみませーんAさんいらっしゃいますかー? Aさーん? ……あれぇ、外から見たら灯り付いてたんだけどなぁ。Aさーん? ……もしかして居留守かぁ? あのぉ、実はですね、あ、管理会社の大杉なんですけどぉ、ご近所さんからAさんのお宅から凄い臭いがするって苦情が来てるんですよぉ。それで私も来てみたんですけどぉ、いやぁ確かに凄い臭いだこれは。なんですかこれは? ちょっと尋常ならざる臭いだ。刺激臭だ。うーん凄い。鼻ひん曲がっちゃいますよ。生ゴミ溜めてるんでしょーぅ? きちんと捨ててもらわなきゃ困るんですよーぉ? 共同住宅ですからねー。ネズミとかゴキブリとか困るんですから。もし近日中に改善されない場合は踏み込みますからねー。鍵開けちゃいますからねー。見られたくないものあったら隠しといてくださいよー。……フフフ。
 
 待ち侘びているのだ、俺は。
 待ち侘びているのだ、俺は。
 待ち侘びているのだ、俺は。
 ナニヲ?
 
 お祭りを。

     *

 カッカッドドンがドン。
 カッカッドドンがドン。
「ねえおにいちゃん」
 ん?
「手、つないでも、いい?」
 いいよ。
「えへへ」
 …………。
「ね、おにいちゃん」
 なに?
「だいすき」
 …………。
「かお、まっかだよ」
 ……うっさい。
「ね、おにいちゃん」
 ん?
「なでて」
 さすり。
「むひょー」
 さすりさすり。
「むひょひょー」
 さすりさすり。
「はぁ、はぁ」
 …………ハァハァ。
「ね、おにいちゃん」
 なに?
「これ、にあってるかな?」
 ……うん。
「ほんとに?」
 たぶん。
「え?」
 にあってる。
「むふふー」
 …………。
「金魚すくおうね」
 うん。
「綿菓子たべようね」
 うん。
「ね、おにいちゃん」
 ん?
「ね、おにいちゃん」
 ん?
「あの人、なにか持ってるよ」
 ?
「ナイフだ」
 ?
「あ、こっちくる」
 ?
「?」
 ?
「あ」
 ?
「ああ」
 ?
「あああ」 
 ?
「ああああああああああああああああああ」 
 ?
 ?
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 ?

     *
 
 ねぇ、いる? 
 育子だよ。
 ねぇ、いるよね?
 もう何日も無断欠勤してるって聞いて、驚いたよ。
 どうしたの? 
 風邪でも引いた? 
 わたし、フルーツ買ってきたよ。
 あなたの好きなジンジャーエールも買ってきた。
 おかゆ作る。
 ね、開けて? 
 ね、開けて? 
 本当に、どうしちゃったの?
 携帯も、出てくれないし……うぅ凄い臭い。
 ねぇ、なんでどうして、なにがあったの。
 ねぇ。
 なんでどうして、なにがあったの。
 ねぇ。
 あれぇー? あなたAさんのお知り合い? 
 ……どちらさまですか。
 いやぁ、私管理会社の者なんですけどぉ。
 ほら凄い臭いでしょぉー? 鼻ひん曲がっちまいそうな。それでこの間も忠告に来たんですよ、勘弁してくれって。でも直してくれないんで、今日はほら、鍵持って来たんです。もー私怒っちゃいました。もー堪忍袋の緒が切れちゃいました。家賃はきちっと払ってくれてるんで広い心で見てましたけど、これはちょっといかんですよ。最悪警察だって呼ぶつもりですよ。もの聞きが悪ければね、ええ。ムフフ。……で、あなたは彼のなに?
 なにって……。
「ね、おにいちゃん」
 ん?
「とっても楽しみなの」
 うん。
「だって夜店ってすごいんでしょ。知ってるよ。テレビで見たもん」    へぇーあなたあの会社のご令嬢な
 うん。                                    のへぇーあの会社のへぇーどうりで身
「この日のためにおこづかいもためたから、なんだって買えるよ。ほら」  なりがきちんとしてるわけだー
 それじゃあ綿菓子しか買えないよ。   へぇーあ、このネックレス高いんじゃないのそうでしょうわぁすご
「え、そうなの?」  いなこんなの私には手が出ないなちょっとやめてくださいこれは彼がくれたんですさ
 うん。  わらないでくださいいやぁーそれにしてもあなたが彼と結婚なんて世の中ほんとわかりません
「…………」              ねーちょっとなんですかその言い方いやだってそうでしょうどう見ても
 でもおにいちゃんが持ってるからだいじょうぶだよ。  釣り合ってない馴れ初めはどうだったんですか
「え、すごい! どうしたの?」    どっちからあもしかしてあなたからいやいやそれはないなーどう考え
 …………。  てもあなたが嵌められたんだ彼に手籠めにされたそうでしょうちょっと彼のことを悪く言わ
 だめだよ、怒られちゃうよ。              ないでください彼は私の大事な人なんですそれ以上
「だいじょうぶだよ」                         ぁ          ぐ  わぁ  み ぁ    ひ  ん
 だめだよ。           っとやめてくださいえ、さわってませんよさわりましたさわってませんってお
 あとでかえそ?                           尻さわりましたさわってないですってもうさ
「…………」                     っきからなんなんですか欲求不満なんですかええそうな
 わたし、とっても楽しみなの!         んですかええそうなんですかははぁなるほど彼とうまくい  
 おまつりにいけるだけでしあわせなの!     ってないんだそうなんでしょうああそうか考えてみれば
「……うん」                           今ここにこうやってきていることからしてそうです
 ね、おにいちゃん。        もんねははぁちょっとなんですか変な笑い方しないでくださいいやいや
 まちきれないよ。    私こう見えても人を見る目だけはあるんですえ信じられないって参ったなぁじゃ                              
 はしろ?   あお嬢さんどんな人間なら信じられるんだいほら言ってみろ言ってみろよてめぇおいふざ
「うん。じゃ、ほら、手」  てんじゃねぇぞなに上から見てんだよ見下してんじゃねぇよその目だよお嬢様   
 うん。ありがと、おにいちゃん。 だかなんだか知らねぇが俺だって必死なんだよでもどうにもならねぇん 
 わたしをしっかり抱えててね。はなさないで左脇に抱えてて。大事な大事な頭蓋骨なんだから落としたりしたら承知しないわよほらそれで右手にはナイフを持つのそうドイツ製のナイフ切れ味鋭いナイフよ私をほじくり廻したナイフよ服は着た着たわね私の服、そう、ならいいの。
 行くわよ行くわよ床を蹴りなさい咆吼なさいスカートを翻して髪を振り乱して駆けなさいなんたって今日は待ち侘びたお祭りなのよおにいちゃん、いくよわたしから手を離さないでねあのドアの向こうがおまつりだよ。
 さぁ、かけぬけるよ。
 
 ほら。

 
 いくよ。
 


 せーーーーーーーのっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!








































































































































 キャッキャッ。
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